特集 狂犬病・デング熱・マラリア・コクシジオイデス症―海外で罹る危険性のある感染症
海外で罹る危険性のある感染症update
5.E型肝炎
李 天成
1
1国立感染症研究所ウイルス第二部
pp.569-571
発行日 2007年7月15日
Published Date 2007/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101101
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E型肝炎とは
E型肝炎は東南アジア,中南米,アフリカ,中近東では常時流行を繰り返している疾患で,しばしば飲料水などを介し大規模な流行を引き起こすことが知られている.
E型肝炎の原因ウイルスはE型肝炎ウイルス(hepatitis E virus,以下HEVと略)である.1955年にインドのニューデリーで飲料水を介した大規模急性肝炎が発生した.この流行では,黄疸性肝炎と診断された症例だけでも29,000人に及んでいる.これは学術的にE型肝炎に関する最初の記述である.その後,アジア,北アフリカ,メキシコなどでもこれに似た水系感染による急性肝炎の大流行が発生している.先進国で非A非B肝炎といえばC型肝炎を意味するが,発展途上国での非A非B肝炎はE型肝炎である.日本をはじめとする先進国でもE型肝炎の発生は時折見られるが,その大部分は輸入感染症例である.
しかしながら,近年,全く海外渡航歴のないE型肝炎症例が日本やアメリカなどの先進国で報告されるようになってきた.最近,豚,シカ,イノシシ,マングースなどの動物からもHEVが分離され,シカとイノシシ由来HEVは人への感染が証明されていることから,E型肝炎は人畜共通感染症でもある1,2).
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