特集 再考:HIV/AIDS予防対策
薬害によるHIV感染者/AIDS患者を取り巻く現状と課題
若生 治友
1
1特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権〈MERS〉
pp.910-913
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101942
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はじめに
昨今,年間1,000名以上のHIV感染者が報告され,感染予防・啓発が強く謳われているが,わが国においては,1980年代前半に既に1,500名あまりのHIV感染が起きていた.この「薬害によるHIV感染」は,血友病患者らが治療に使用した血液製剤によってHIV感染したことを言う.そして,その多くはHIVに加え,C型肝炎ウイルス(HCV)にも重複感染している.
現在,抗HIV治療はHAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)が中心的な治療であるが,「薬害によるHIV感染者」は,C型肝炎の重篤化やHAARTの長期的な副作用・耐性ウイルスの発現から治療困難となり,毎年10名以上の患者が亡くなっている.血液凝固異常症全国調査によれば,2009年5月末時点で,HIV感染1,432名のうち646名が亡くなられている(図1)1).
血液製剤によるHIV感染から約20数年,「薬害によるHIV感染」者は,わが国においても世界的に見ても,最も長期に生存しているHIV感染者のグループである.さらに言えば,毎年10組以上の遺族が増え続けているグループとも言える.
「薬害によるHIV感染者/AIDS患者を取り巻く現状と課題」を考えるとき,患者本人の課題だけではなく,家族やパートナーを失った遺族へも思いを馳せなければならない.
本稿では,患者本人および遺族,それぞれの現状と課題を考えてみたい.
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