連載 人を癒す自然との絆・9
コミュニティ・ガーデンに居場所を見つけて
大塚 敦子
pp.314-315
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101782
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アメリカ北西海岸のシアトルから南に約40分ほど行ったところにある,中規模の地方都市タコマ.ダウンタウンに近いヒルトップ地区には,「グアダルーペ・ガーデンズ」と呼ばれる7つのコミュニティ・ガーデンがある.1990年代半ば,「カソリック・ワーカーズ」という市民運動の団体が中心となって,ゴミ捨て場や麻薬常習者たちのたまり場と化していた空地を片づけ,これらの庭を作った.
ヒルトップ地区は,以前は麻薬中毒者やホームレスの人々がたむろし,通りすがりに人を撃つドライブ・バイ・シューティングなども頻発する危険な地域だったという.それが,庭ができ,「カソリック・ワーカーズ」の有志や市民が,ホームレスの人々とともにオーガニックの野菜作りを始めてから,それまでこの地域には近づかなかった人たちが訪れるようになった.CSA(Community Supported Agriculture)という日本の生協に似たシステム(自分がサポートする畑の収穫物を直接買う)を始めて以来,新鮮なオーガニック野菜を買いにくるミドルクラスの人たち,庭仕事を手伝いにくるボランティアの学生たちなどの往来で,地域の雰囲気はずいぶん変わったという.
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