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男性更年期障害の概念とその背景
ここ10年足らずの間,本邦において「男性更年期障害」という概念がたびたびマスコミに登場し,今日においては比較的広く認知されるに至っている.しかし,その定義は未だ明確とは言えず,医療の現場においても類義の疾患との区別が曖昧で,一部混乱が生じているようにも見受けられる.まずは,これらを研究対象としている学会での男性更年期障害に関連する疾患の定義ならびに位置付けを紹介する.
男性においても,女性と同様,中高年期における性ホルモンの低下によりさまざまな症候が生じ得ることは以前より指摘されていた.しかし,女性の場合は閉経という比較的ドラマチックと言える女性ホルモン(エストロゲン)環境の変化が生じ,それに伴い症候の出現も割合明確であるのに対して,男性における男性ホルモン(テストステロン)の減少は比較的緩徐であるために,その症候は自覚的にも他覚的にも明確に意識されることが少なく,そのために男性におけるこれら性ホルモン減少に伴う症候について,議論が発展することは少なかったようである.しかし,近年本邦を含めた先進国が軒並み高齢化社会を迎え,日を追うごとにこれが現実化していることが実感されることにより,改めて男性の更年期に焦点が当てられることとなった.1998年に国際学会として「International Society for the Study of the Aging Male(ISSAM)」という中高年男性を対象とする専門学会が発足し,本邦においても2001年に「日本Aging Male研究会」(2006年に学会化)が発足,男性更年期について科学的な議論を行う場が誕生することとなった1).これらに並行し,大学附属病院を中心に「男性更年期外来」なるものが相次いで開設され,主に泌尿器科医が専門的な診療にあたるようになってきている.
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