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今までは1995年に当時の厚生省から発表された『改定 離乳の基本』を目安として離乳について指導していた市町村が多かったと思いますが,2007年に『授乳・離乳の支援ガイド』が発表され,これが基本となりました.この改訂にあたって中心となられた日本子ども家庭総合研究所の堤ちはる先生にお話を伺ったことがありますが,やはり時代とともに食生活が大きく変わってきたことが改訂の背景にあるようです.また画一的に指導をするのではなく,一人ひとりの子どもたちの体や発達の状態に合わせて一緒に考えようという姿勢も明らかになってきたようです.すなわち成人であれば,BMIや偏食,喫煙,飲酒などの生活習慣,糖尿病や高脂血症などの背景疾患を考えて,一人ひとりに合わせた栄養のお話をすると思います.いわゆる「order made」です.しかしながら乳児では,月齢にあわせていわば「ready made」の指導がされてきたように感じています.それは5か月になったら離乳を開始する,1歳になったら卒乳するというように月齢に沿った考え方でした.もちろん低出生体重児の場合や母親の病気,母乳の分泌低下,繰り返す感染症など乳児でもさまざまな要素がありますし,生活環境や経済状況など社会経済的因子も絡んできます.そう考えると,画一的には割り切れないことは当然です.また外食の利用,離乳食を含めた市販の食品の利用も盛んになってきました.シンガポールでは,外食が手近に利用できるため,包丁やまな板のない家庭が増えているという話を聞いたことがありますが,そこまでではないにせよ,女性の社会進出もあいまって,家庭で料理をする機会が減りつつあることも事実だと感じています.
堤先生に伺った策定のねらいは,表1に示しましたが,この中で印象に残ったのは,乳汁や離乳食などの「もの」にのみ目を向けるのではなくて,「一人一人の子どもの発達を尊重していきましょう」ということでした.ですから何を何g食べるということではなく,あくまで食品を目安で示しているというわけです.また栄養職だけ,保健師だけということではなく,子どもをとりまくすべての保健医療従事者が共通の認識を持つということもとても大切なことだと思います.
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