視点
社会の変化に応える公衆衛生とは
野見山 哲生
1
1信州大学医学部衛生学公衆衛生学
pp.840-841
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101440
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アジアにおける3回目のオリンピックが,この原稿を書いている現在中国で開催されている.かつての日本,韓国がそうであったように,オリンピックを経て政治的,経済的,そして文化的に一層発展し,国際社会の中でさらに重要な位置を占めるようになるであろう.
戦後の混乱の中で,新たな日本を作る高度経済成長の中,東京オリンピックに湧いた.高度経済成長に伴う産業の発展は四日市ぜんそく等公害による健康障害を伴った.これらの「公害病」という社会問題に対し,当時アカデミズムの中にいた研究者は行政や地域住民と一体となり,疫学的なエビデンスを出す一方,メカニズムを明らかにするための基礎研究に邁進していたことはすでに知られたところである.当時衛生学,公衆衛生学に身を置いた諸先輩方が疫学的,実験的な調査,研究を繰り返してきたのは,社会のニードに真っ正直に応え,事象の存在と病態,そして原因を解明し,予防に繋げたい,という思いがあったからではなかろうか.
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