特別寄稿
米国における鍼灸師とパブリックヘルス(下)
中野 佐智子
pp.1007-1009
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101210
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ニューオーリンズでのボランティア鍼治療
2005年にニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの直後に,アメリカでAcupuncturists Without Boarders(以下,AWB)という鍼灸師によるボランティア組織が発足しました.私もこのAWBの一員として,2005年11月に10日間ほど,被災地のニューオーリンズでボランティア鍼治療に参加しました.最初は崩壊された街を見て驚きました.人気のないゴーストタウン,電気が不通なので夜は真っ暗で不気味でした.道路上はゴミだらけ,ガラスの破片が辺りに散らばり,ボートもぽつんと道路の真ん中に停泊,一軒ごとに救助隊のチェック印と人間や動物の死のメッセージが書かれてあったり,一番被害の大きかった第9区では,まだ死人を発見しているため,多くの道路が閉鎖されていました.暑い気候と,浸水,腐敗と,何とも異様な匂いでした.
鍼治療の場所は,まずはベトナム教会でした.すべてをなくし,ベトナムから難民として米国に渡ってきたのに,再びこの被害で全所持品をなくしてしまった人たちに施術しました.
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