特集 超高齢社会の地域医療制度の展望
超高齢社会における地域医療を担う医師生涯教育制度の確立
矢崎 義雄
1
1(独)国立病院機構
pp.904-907
発行日 2007年11月15日
Published Date 2007/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101183
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そもそも医学教育を含めた医師育成制度は,その国の歴史や文化,そして経済と社会の医療へのニーズの変化により影響を受けるところが大きい.わが国も,昭和36年の国民皆保険制度の導入と高度経済成長に支えられて,国民はきわめて少ない負担で医療サービスを享受してきた.
しかし,最近の人口の少子高齢化と医療技術の高度化により国民医療費が増大する一方,経済成長が停滞してこれを吸収することができず,国民の医療費への負担感が大きくなった.その結果,国民の医療に対する意識が変化して,医療の評価が従来の医師主導のパターナリズムから,患者の安心,信頼,満足といった患者側の評価が重きをなすパラダイムシフトが生じてきた.すなわち,高度な専門医療のみならず,幅広く患者の抱える問題にしっかり対応できる医師の育成が社会的にも大きな課題となった.
さらに,人口の都市部への流入と首都圏の機能強化により,経済はもとより,行政サービスにおいても大きな地域格差が生じていることが指摘されている.そこで,地方には高齢者が残されて医療ニーズが高まる一方,医師,特に緊急の事態にも対応が可能な病院医師の確保が困難となり,医療における地方格差がますます拡大し,その是正が喫緊の課題として注目され,今日では行政を含めた対策が最大の焦点になっている.
このような医療を取り巻く社会的な環境変化を背景にして,卒前の医学教育を中心に医師育成システムの抜本的な改革が求められている.
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