特集 性差医療から考える―患者の望む医療とは?
性差医学・医療(女性医療)の歴史と進歩―米国における女性医療とCenter of Excellence(COE) in Women's Healthの展開
龍野 一郎
1,2
1千葉大学大学院医学研究院細胞治療学(旧内科学第二)
2千葉大学医学部附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科
pp.735-742
発行日 2007年9月15日
Published Date 2007/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101141
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古くから,医療・医学の分野では男女比が圧倒的に女性に傾いている疾患,男女間の発症率が同じでも疾患の予後が異なるもの,いまだ生理的生物学的解明が女性で遅れている病態などの存在が認識されてきてはいましたが,このような男女の差(性差)を考慮した医療・医学(Gender-specific or Gender-sensitive Medicine:ジェンダー・センシティブ・メディシン)は必ずしも重要視されてきませんでした.日本では第二次世界大戦後の急速な経済発展と相まって,公衆衛生・医療水準の急速な進歩が,乳幼児死亡率は急激な低下・若年者の感染症(結核など)をもたらし,中高年のがん・生活習慣病への対策によって平均寿命は改善し,現在,世界一の長寿国の1つとしての地位を確立してきましたが,古くより男性を中心として作られてきた社会であり,このような公衆衛生・医療水準の進歩は,実は必ずしも性差(男女差)を考慮せず,男性を中心としたデータに基づいて築き上げられてきたという反省が今なされています.
このような反省に基づいて,男女の生物学的性差,社会的な男女の位置付けと相互の関係性,男女それぞれに見られる特有の疾患や病態などの医学的な実証に基づいて行う医療として,性差を考慮した医療・医学が注目を集めてきています.そして,日本では2001年5月に鹿児島大学を手始めに,同年9月に千葉県立東金病院で立ち上げられた女性専用外来は,性差を考慮した医療・医学の実践の場として機能し,これらをモデルにした女性専用外来が全国に広がりました.
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