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2001年の麻疹流行では1993年以降で最も多い患者発生があり,麻疹の全国患者推計数は28.6万人だったが,各地での関係者の努力により1歳代の麻疹ワクチン(以下,ワクチン)接種率が向上したことなどから,2005年には4,200人と急速に減少した.しかし,2007年シーズンは地域的には南関東地域,年代的には20代前後の若者を中心にした流行が見られており,基幹定点から報告される成人麻疹(届出対象は15歳以上)が1999年の調査開始以来で最多の報告数となっていること,小児科定点からの麻疹では,10~14歳の報告割合が例年より高いことなどが特徴と言える.この流行には,ワクチン未接種かつ麻疹未罹患の者(以下,未接種未罹患者)に加え,ワクチンを接種したにもかかわらず免疫が獲得できなかったprimary vaccine failure(PVF),および接種により免疫を獲得したものの感染機会の減少により免疫が減弱したsecondary vaccine failure(SVF)が関連していると考えられている.
2007年の流行に先立って2006年に茨城県南部において発生した麻疹流行では,散発例の他,小学校と中高一貫校の2校で集団発生が確認された.どちらの集団発生においても麻疹患者はワクチン既接種者に多かったが,これは2007年シーズンの東京都における傾向と共通しており(東京都未公開データによる),今後の麻疹対応にあたって参考とすべき点が多いと思われる.
筆者は,国立感染症研究所感染症情報センター実地疫学専門家養成コース(FETP)在籍中,2006年の茨城県南部における麻疹アウトブレイクの調査に関わる機会を得たので,その概要について報告する.
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