視点
憲法九条の大切さ―戦争は最大の公衆衛生問題
日野原 重明
1
1聖路加国際病院
pp.540-543
発行日 2007年7月15日
Published Date 2007/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101105
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『公衆衛生』誌という予防医学の専門誌に,私が「憲法九条」を考え,私の論説を掲載したいとの要請を受け,私への注文がどんなところにあるかと思案したが,まず私の尊敬するウィリアム・オスラー(1849-1919)が,第一次世界大戦の最中に,次のような手紙を書いていることをお伝えしたい.「避けがたい戦争を避けるという難問を引き受けるものは,すべての民族は同じ血液からなっている人間だということを誰よりも最もよく知っている医師以外にはない」.ちなみに,オスラーの1人息子は,欧州のフランダース地方での対ドイツ戦で戦死している.
そしてまた偶然にも,この原稿を今夜書く6時間前に,アメリカ国籍の日系3世スティーヴン・オカザキ監督作品,映画「白い光と黒い雨――広島・長崎の破壊」(日本題「ヒロシマ ナガサキ」)の試写会で,広島と長崎の原爆を受けて,からくも生存して今日に至っている被爆された方たちの回顧と原爆投下現場の記録を見たばかりである.
そのような今の私の心境から,憲法の改正案への激しい抵抗心以外に,九条の文章をさらに徹底した戦争放棄に改め,軍隊となりつつある自衛隊の名称をも変えて,「ボランティア隊」として外国に送り出し,難民などのために活動してもらいたいという気持ちで,この原稿を書き始めた次第である.
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