特集 エイズ対策は成功したか
HIVの母子感染予防―公費とすべき妊婦のHIV抗体検査
戸谷 良造
1
1国立名古屋病院産婦人科
pp.925-929
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100985
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本特集「エイズ対策は成功したか」に関し,筆者に与えられたテーマは「HIVの母子感染予防」である.筆者がグループ長を務めてきた「HIV母子感染予防に関する臨床的研究グループ」による成績を中心に,本稿ではわが国での最新の臨床研究データとHIV母子感染撲滅への障害となる問題点,およびその解決法に関し概説する1).
日本ではHIV母子感染の防止は可能
HIVの無治療時母子感染率は先進国では30%,開発途上国では40%とされる.この母子感染率は1994年には7%2),1999年には2%にまで防止可能となった3).現在日本での防止対策施行例累積感染率は1.6%と,ほぼ完全に防止可能となった.1996年以降,妊婦にHIV抗体検査がなされ,母子感染防止対策が完全に実施された.HIV感染母体からの出生児には,HIV感染児の発生はない1).発生が報告されたHIV感染児は,その母親のHIV抗体検査がなされず,そのため防止対策も行われなかった出生児である.
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