連載 医学ジャーナルで世界を読む・9
健康政策の「構想力」
坪野 吉孝
1
1東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
pp.650-651
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100948
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●世界の乳幼児死亡の現状
『ランセット』誌が6月28日号より5週連続で,世界の乳幼児死亡の現状と対策に関する論説を連載している(表の1).毎年世界では,1,000万人を超える5歳未満の乳幼児が死亡している.このうち50%が,わずか6カ国に集中している(インド・ナイジェリア・中国・パキスタン・コンゴ・エチオピア).また全体の90%が,42カ国に集中している.おもな死因(下痢・肺炎・麻疹・マラリア・AIDS・新生児仮死・早産・新生児破傷風・新生児敗血症)のうち,新生児仮死以外には,有効性に関する十分な科学的根拠のある予防法や治療法が,ひとつ以上存在する.これらの予防法や治療法の普及率は,大半が50%未満に留まっているのが現状だ.
もしもこの普及率が100%になれば,現在の乳幼児死亡の63%を防ぐことが可能になる.したがって,「新しいワクチンや,新しい薬剤や,新しいテクノロジーを待つ必要はない」.むしろ,「われわれがすでに持っている知識を実行に移すことが,今日の主要課題」だという.最終回の論説が掲載された7月26日号には,世界保健機関(WHO)の新しい事務局長であるJong-wook Lee氏がコメントを寄せ,WHOがリーダーシップを発揮してこの問題に取り組む意向を表明している.
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