特集 メタボリックシンドローム―現状とその課題
メタボリックシンドロームの病態と診断
松澤 佑次
1,2
1住友病院,大阪大学
2大阪大学
pp.195-199
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100714
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Beyond Cholesterolの心血管病対策
WHO(世界保健機関)は,2002年のWorld Health Reportにて新たなグローバルな健康政策として,心血管病の予防対策を重視する宣言を行った.つまりこれまでWHOが重点を置いてきた平均寿命の短い発展途上国に対する栄養補給や感染対策を続けるものの,先進国はもちろんのこと,平均寿命が比較的長いアジア,中国などで過栄養と運動不足を背景に,すでに増加の一途をたどっている心血管病をターゲットにした健康政策を行うことが,世界の寿命をさらに延ばすことになると判断したのであった.
わが国の厚生労働省発表の死因統計でも,脳血管障害,心血管病が全死亡の約30%を占め,がんと匹敵するものである.しかもこれらの動脈硬化性疾患は働き盛りに突然発症することが多く,社会的にも極めて損失が大きい上に,死亡から免れたとして,多数が後遺症で苦しむケースが多いことから,がんよりも深刻であるとも言える.またわが国の女性の寿命が85歳と世界一であるのに比べ,男性はそれより7歳以上も短い.これはなにも男性が75歳になると死んでいくというのではなく,男性でも90歳を超えても矍かく鑠しゃくとしている人は数多くおり,寿命を決めているのはむしろ男性の働き盛りから初老期に襲ってくる血管病であり,その対策が,わが国でも重要な課題になるのである.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.