特集 インフルエンザ
インフルエンザワクチンの現状
田村 愼一
1
1国立感染症研究所感染病理部
pp.758-762
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100653
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インフルエンザワクチンには不活化ワクチンと生ウイルスワクチンがあり,わが国を含む多くの国では,不活化ワクチンが用いられ皮下(あるいは筋肉内)に注射されている.不活化ワクチンには,全ウイルス粒子ワクチン,HAワクチン[エーテル処理によりウイルスの脂質が除去された蛋白質成分から成るワクチンで,主要な防御抗原であるヘマグルチニン(HA)がその約3割を占めるため,「HAワクチン」と呼ばれる]およびサブユニット・ワクチンがあるが,わが国では1972年以降,HAワクチンが用いられている.一方,生ワクチンに関しては,低温馴化生ウイルスワクチン[25℃で増殖する低温馴化親株と自然流行株を混合培養し,遺伝子の再集合により,HAとノイラミニダーゼ(NA)遺伝子が野生流行株でそれ以外が低温馴化親株由来のウイルスをワクチン株として用いる]1)が,旧ソ連では1977年から全世代に,米国でも2003年から5~49歳までの世代に限って使用が認可され,経鼻噴霧投与されている.
一方,ここ十数年の間に,インフルエンザに関してウイルスの性状,感染発症の機構,および防御免役機構等の研究が急速に進み,ワクチンの有効性の基礎が明らかにされてきている2,3).
このような状況下で,本稿では感染によって誘導される強い防御機構を基に,現行のワクチンによって誘導される防御機構の有効性を評価し,さらに,より有効かつ安全なワクチン開発の可能性について述べる.
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