特集 越境!公衆衛生
社会問題を解決する社会技術とは何か
堀井 秀之
1
1東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻
pp.432-436
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100577
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人々が求める安全安心
近年,安全安心が様々な分野で流行っている.“安全”ではなく,“安全安心”が強く求められているということは,一体何を意味しているのであろうか.これは単なる流行なのであろうか,それとも本質的な流れなのであろうか.
マズローの有名な欲求階層説では,人々の持っている欲求は階層的に5段階に分けられる.すなわち,「生存のための生理的欲求」「安全欲求」「帰属意識・愛情の欲求」「尊敬されたいという欲求」,「自己実現の欲求」という階層で,低次元の欲求が満たされてはじめて,高次元の欲求へと移行するとされている.その中で「安全の欲求」は下から2番目という,かなり基本的なところに位置づけられた欲求になっている.安全欲求の内容は,苦痛とか恐怖,不安,危険を避けて,安定・依存を求める欲求であり,言葉としては安全を使っているが,これはわれわれがふだん安心という言葉で表わしていることにかなり近い.安心を達成するということは,人々の欲求の中ではかなり基本的なことだということがわかる.
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