連載 New Public Healthのパラダイム―社会疫学への誘い・3
人間関係と健康
近藤 克則
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.224-228
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100550
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結婚しない(かもしれない)人たちが増えている.一方で,結婚しても離婚する夫婦も増えており(年間約28.6万組),その数は1年間に結婚するカップル数(約73.7万組)の3分の1を超える.一見気ままに見える「未婚」という選択も,不幸な結婚の解消でストレスが軽減するかに見える「離婚」も,実は(今までの研究に基づけば…だが)健康にはよくない.人間は,人々とのつながりを絶たれ孤独になると,機能が低下して健康まで損なってしまう社会的動物なのである.
人間関係と健康の位置づけ
健康に影響する主な因子は,いくつかのレベルに分けて考えることができる.中心に生物としての人間を置いて,図1のように同心円を描いたとしよう.生物医学モデルでは,健康に関することを,中心に近い個人固有の因子やライフスタイルで説明する.それに対し「社会的動物である人間」を対象とする社会疫学では,個人を取り巻く環境の影響を重視する.前号で取り上げたのは図1の中で最も外側に位置する,社会経済環境因子であった.今回は,両者の中間に位置する人間関係と健康の問題を取り上げる.「社会的支援が健康に有益であり,社会的孤立が不健康につながることの根拠は今や無視できない」1)ことを示し,なぜ人間関係が健康に影響するのか,関連する概念などについて述べる.
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