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なぜ禁煙治療の制度化が必要なのか
わが国では,1950年当時,年間わずか1,000人であった肺がん死亡数が現在では5万人を超え,この約50年間に50倍も増加している.この増加傾向は,喫煙が特に流行した男性で顕著である.また,喫煙による超過死亡数は2000年で11.4万人と推計されており,総死亡(96.1万人)の12%を占め,欧米がたばこ対策を開始した1960年代当時の水準に達している(図)1).わが国では最近30年間,1人当たりのたばこ消費量がほぼ横ばいで推移していることから,今後,高齢化と相まって,喫煙による健康被害がさらに拡大するものと予想される.この健康被害の拡大に歯止めをかけるためには,年内にも発効する見通しの世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組条約」に基づいて,早急にたばこ対策を国家的に推進し,世界的に見て今なお高い水準にあるたばこ消費量を大幅に減少させることが必要である.
ところで,禁煙対策は喫煙防止対策に比べて即効性があり,最近急速に拡大しつつある喫煙による健康被害の当面の抑制策として期待される.2000年から2050年の期間において,たばこ対策の効果を喫煙防止対策単独の場合と禁煙治療を組み合わせた場合に分けて比較検討した成績によると,喫煙防止対策単独では喫煙による超過死亡数を減少させる効果は小さく,しかも効果が見られるのは2030年以降と推定されている2).今世紀前半の健康被害を防ぐには,喫煙者層へ働きかけ,喫煙率を大幅に低下させることが必要である.そのためには,たばこ税の値上げをはじめ,公共場所や職場の禁煙化,たばこの広告規制や警告表示の強化などの喫煙者の動機を高める対策と,禁煙の動機の高まった喫煙者に対する禁煙治療体制の整備と利用の促進が必要である.
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