視点
保健所におけるシミュレーションの活用
荒田 吉彦
1
1北海道胆振保健福祉事務所保健福祉部(北海道室蘭保健所)
pp.610-611
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100124
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誰にでも,深い後悔を伴う,忘れようとしても忘れられない思い出がある.中学生時代,家族が寝静まった深夜,なぜタバコに手を伸ばしてしまったのか.仕事納めの日に,誰からも勧められていないのに勝手に飲んで,なぜ正体をなくすほど泥酔してしまったのか.人生を「あの時」からもう一度やり直したいという思いはあっても,そういう願いが叶えられるのは,小説や映画の中だけのお話である.
もちろん,日々の生活に限らず,公衆衛生の現場においても後悔の種は尽きない.「あの時,もう少し丁寧に説明しておけば」,「あの時,一言声をかけておけば」と何年経過しても,ふとした瞬間に思い出す場面がいくつもある.できるだけ新たな後悔を生み出したくはないが,どういう状況にも対応できる万能のマニュアルは,この世に存在しない.結局,初めて経験する事態に,科学的な根拠と法令に幾ばくかの想像力を加味して,スタッフとディスカッションを繰り返しながら対応することになる.そして,そのディスカッションこそが,保健所にとって最も重要な仕事なのだと思う.
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