- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書を手に取り,まず強いインパクトがあったのが,冒頭の節でした。乳幼児健診の「基本的な心構え」として,「健診は医療の延長ではありません」という文章から始まります。最近では子育てが「孤育て」としばしば表現されるように,孤立した育児環境に伴う保護者の育児不安や育児負担感の増大は社会課題の一つであり,そこから発展し得る児童虐待のリスクが指摘されています。乳幼児健診の意義として,子どもの健康状態の確認や疾病スクリーニングとともに,子育て支援の意味合いがますます大きくなってきました。また,2024年から始まった国民健康づくり運動プラン「健康日本21(第三次)」では,ライフコースアプローチとして胎児期から高齢期に至るまでの生涯を踏まえることが必要とされ,乳幼児健診はそのキーポイントの一つとなります。本書はこうした社会ニーズにコミットしており,冒頭の言を通じて,乳幼児健診にむかう医師の構えを疾病志向型から健康志向型へ切り替える,実践者のための指南書であると感じました。
本書の内容も充実しています。初めに総論として「乳幼児健診の実際」が示された後に,各論として「月齢別の健診のしかた」に続きます。各月齢の健診における診察方法が手順に沿って分かりやすく解説されており,シンプルな図表とかわいらしいイラストにより理解が進みます。また,それぞれの月齢の保健指導の要点やよくある質問への対応についても解説があります。健診現場ですぐに使える具体的な指導法が簡潔に記され,後に続く「育児相談・育児支援」の詳細な解説により理解が深まるよう工夫されています。さらに,「各月齢の発達の目安・ポイント一覧」が本書の見開きにあり,健診直前にサッと確認事項をおさらいするのに役立ちます。この内容はしおりとして付録にもなっていて,読者への細やかな配慮を感じました。

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.