徹底分析シリーズ 麻酔科医・手術室スタッフの健康管理学—産業医学的ヘルスケア
メンタルヘルスのためのEAP3:事業場外資源によるケア—影の立役者に迫るメンタルヘルスの現実
山田 恵子
1,2
Keiko YAMADA
1,2
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
2順天堂大学大学院医学研究科 疼痛制御学
pp.618-621
発行日 2025年6月1日
Published Date 2025/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360320060618
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「麻酔科医は手術室の忍者」
—生成AIが教えてくれたこの言葉を聞いて,私はふと昔を思い出した。かつて私も毎日のように手術室にこもり,時には明け方までオペに立ち向かう生活を送っていた。やりがいを感じる一方で,理不尽な手術も多く,麻酔に失敗する夢を見て目が覚めることもあった。それから10年以上が経ち,現在は慢性痛を診る臨床医として,重度の痛みを抱え,バーンアウト(燃え尽き症候群)の末に休職や退職を余儀なくされた患者,あるいは他院で鎮痛薬漬けとなり,眼前に漂着した患者の社会復帰を支援している。また,産業医としてさまざまな労働者の健康管理にも携わるようになった。そんな今,かつて白い灰のように燃え尽きるまで働いたあの頃の朝焼けを思い出しながら,この原稿を書いている。
確かに麻酔科医は,手術室で患者の生命を影で支える縁の下の力持ち。しかし,その「影」が深すぎると,自分自身を見失いかねない。もし今,ストレスの限界を超えそうになっている人がいたら,どうか届いてほしい。自分自身を見失わないように。
本稿では,麻酔科医特有のメンタルヘルスリスクと,手術室の外にある「救いの手」=事業場外資源の活用法を紹介する。

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