書評
「生きる!」を支えるACP
桜井 なおみ
1
1一般社団法人CSRプロジェクト
pp.993
発行日 2025年11月10日
Published Date 2025/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091713550350110993
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
「生きる。」ではなく,「生きる!」を支える
今から20年ほど前,初めて自分と同じ病気(がん)に罹患した友人の看取りを経験しました。私はだいぶ前に本人から,治療法が限られてきていること,生きられる時間が週単位になっていることを打ち明けられていました。体調が急変し,救急車で運ばれた病院へ私は急いで駆けつけましたが,そこで見たご両親の呆然とした表情は忘れることができません。ご両親は,再発も,病状の進行も,まったく知らされていなかったのです。「帰省しないのは,全てが順調な証拠」と信じていました。
入院初日,おむつの購入を看護師から頼まれたとき,私は「親が子どものおむつを買いに行くなんて不憫だ」と思い,「私が買いに行くので,お母さんは傍に付き添ってあげてください」と言いました。しかし,お母さんは「今まで何もしてあげられなかったのだから,このぐらいはさせてください」と仰いました。旅立った後のご両親の悲嘆は大きく,私のところには毎年手紙が届きました。患者の「生きる!」を支えるプロセスに,もう少しご両親が参加できていれば,悲しみの大きさは違ったのではないか—この経験は,私がACPを大切だと思うきっかけになりました。

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.

