増刊号 就学・就労支援
第3部 はたらく:就労
第2章 各就労支援領域
17 企業の健康経営を支える作業療法士の役割と実践
藤井 寛幸
1
Hiroyuki Fujii
1
1株式会社フジイコーポレーション
pp.947-951
発行日 2025年7月20日
Published Date 2025/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590080947
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
概論
近年,急速な少子高齢化とともに労働人口の減少が深刻な課題となっている国内において,「健康経営」を経営戦略の一環として取り入れる企業が増えている.人の往来が活発な都市部に比べ,人口流出が進む地方では,雇用の維持や人材の定着がいっそう困難であるため,従業員が健康を維持しながら長く働ける環境づくりは,特に地方において地域経済の発展に欠かせない.また,働き方の多様化と社会的価値観の変化に伴い,従業員の健康とウェルビーイング(幸福度)を促進することは,単なる福利厚生にとどまらず,企業の競争力を強化するための重要な戦略となりつつある1).
本稿のテーマでもある「健康経営」とは,従業員の健康を支える施策を企業活動に組み込み,健康増進を通じて従業員の生産性向上を目指す経営手法を指す.たとえば,①健康管理が徹底されることで体調不良による欠勤や業務のパフォーマンス低下を防ぐ,②働きやすい環境が整うことで,離職率の低下や人材の定着を図る,等が挙げられる.しかし,従業員一人ひとりの健康意識には差があるため,健康経営を企業文化として根付かせることが不可欠である.ただし,企業文化としての定着を実現することは容易ではなく,多くの企業が試行錯誤している.

Copyright © 2025, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.