特集 非がん患者の緩和ケア
コラム:—私にとっての緩和ケア—死を語るタイミング—“希望”と“現実”のはざまで
佐川 佳南枝
1
1京都橘大学
pp.670
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590070670
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私はこれまで,緩和ケアの現場に直接かかわった経験はありません.しかし,看護の学生を対象に大学院で「看護社会学」を教える中で,緩和ケアについて深く考えさせられる機会がありました.とりわけ印象に残っているのが,GlaserとStraussの『死のアウェアネス理論と看護—死の認識と終末期ケア』(医学書院,1988)を題材にした回で学生によって語られた,ある患者さんのエピソードです.
その方は,がんの進行により緩和ケア病棟へ転院されたばかりでした.とはいえ,まだ新しい治療法を始めたばかりで,「○パーセントの確率」にかけて,回復への希望を持ち続けていたそうです.ところが病棟に入って間もなく,プログラムの一環として「死について語る」時間に参加するよう勧められました.その瞬間,患者さんは強い怒りを示しました.「なぜ,まだ生きる希望をもっている自分に,死を前提とした話をさせるのか」と.
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