提言
認知症基本法の理念実現に向けて作業療法士ができることは何か?
浅野 朝秋
1
Tomoaki Asano
1
1秋田大学大学院医学系研究科
pp.532-533
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590060532
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●認知症の中に私がいる
There is “me” in dementia.これは去る2月14日,認知症介護研究・研修東京センター主催の「希望のリレー 国際フォーラム2025」1)において,オーストラリアから招かれたKate Swafferさんが述べた言葉である.Kateさんは,50歳で若年性認知症と診断されるまでは看護師として認知症ケアに尽力してきた.彼女は「私たちは何もわからなくなった人ではない.私たちのことを私たち抜きで決めてほしくない」,「ほとんどのいわゆる行動心理症状は,私たちにとっては,何の不思議もないあたり前の反応です」と力強く主張した.さらに丹野智文さん(おれんじドア実行委員会代表,公益社団法人認知症の人と家族の会理事),藤田和子さん(一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ代表理事),山中しのぶさん(一般社団法人セカンド・ストーリー代表理事)等のおなじみのメンバーに加え,わが秋田県からは,あきたオレンジ大使を務める神原繁行さんが,サポーターの作業療法士・佐藤昌子さんと共に登壇した.特に丹野さんは当事者目線で社会に対して活発な提言を行っている2).彼らの訴えたい思いは1つ,認知症者の自己決定権の尊重である.
この自己決定権は,認知症基本法3)にも反映されている.同法をひもとくと,7つの基本理念と,それを実現するための8つの基本的施策が謳われている.その中にまさに彼らが提唱している,多くの人が認知症がありながらも地域で生活するために必要な,尊厳の保持,対等な構成員としての立場,意見表明や社会参加の機会の確保等の文言が踊っているのである.
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