提言
伝統芸能から人・地域社会を考えてみる
山口 理貴
1
Riki Yamaguchi
1
1一般社団法人Bridge
pp.328-329
発行日 2025年4月15日
Published Date 2025/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590040328
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伝統芸能と風習:三味線・民謡文化から
筆者は学生時代に津軽三味線という日本の伝統楽器と出会い,現在に至るまで作業療法士の活動と並行して演奏や教室活動を行っている.今や独立した演奏スタイルも確立されている楽器だが,もともとの楽器の役割として,その土地に伝わる“民謡”を伴奏するという特徴がある.民謡は全国各地に存在し,数多くの「作業唄」が残されている.日本人は草刈り・田植え・船漕ぎ・漁・子守等,さまざまな場面で唄い,己を励ましながら生活に必要な作業を行い,また宴の席で唄や演奏を楽しんでいた.テレビやラジオ,車や電車もない時代に,自分たちで音楽を奏でて仕事や余暇の時間を過ごす.想像するだけで何か幻想的な感覚すら覚える.
また津軽三味線という芸能は,青森県津軽地方で視覚障害のある芸人が人家の前で演奏を披露し,お金や食料等をもらい受ける「門付け芸」が発祥とされている.これらは江戸時代に新潟県を中心に栄え昭和初期ごろまで存在した「瞽女」と呼ばれる視覚障害のある女性の旅芸人の文化から派生し,全国各地で見られた芸のかたちである.三味線・民謡文化は日本各地で展開され,その土地ごとに楽器の素材や演奏方法,歌詞や唄い方を変えながら,人々の生きる糧として存在してきた.私たち作業療法士にとっても身近な,「作業」,「障害」,「生活」といった言葉にも,実は深くかかわる伝統芸能なのである.
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