Close-up アントレプレナーシップ—その概念と医学・理学療法への応用
理学療法領域におけるアントレプレナーシップの実践—臨床・研究・社会実装をつなぐ行動原理
金子 文成
1
Fuminari KANEKO
1
1東京都立大学人間健康科学研究科理学療法科学域
キーワード:
アントレプレナーシップ
,
研究成果活用型ベンチャー
,
社会実装
,
医療機器
,
産学連携
Keyword:
アントレプレナーシップ
,
研究成果活用型ベンチャー
,
社会実装
,
医療機器
,
産学連携
pp.1178-1183
発行日 2026年10月15日
Published Date 2026/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091505520600101178
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
アントレプレナーシップは「起業家精神」と訳され1,2),企業家だけに必要な能力だと思われがちである.しかし,その本質は,未解決の課題を見出し,新たな価値を構想し,周囲を巻き込みながら実現する思考と行動力にある.臨床の方法を改善すること,研究成果を製品やサービスへ展開すること,企業と連携して新たな仕組みを創出することも,その実践であると考える.
研究者にとって,科学論文や学会発表は重要な成果である.一方,論文として公表された知見が,そのまま臨床で利用できる検査法や治療法になるわけではない.研究成果と臨床現場との間には,科学的検証だけでは乗り越えられない谷がある[valley of death:死の谷(図1)]3).
筆者はこれまで,基礎研究の成果を実用化する取り組みとして,研究成果活用型ベンチャーの設立,既存企業への技術移転などを行ってきた.その原動力は,研究成果を患者の診療に利用される段階,すなわち臨床での普及にまで帰結させたいという思いにほかならない.
理学療法士による起業では,基礎研究に基づく製品を製造販売する企業よりも,介護保険による通所・在宅サービスや,自費によるフィットネス事業などが一般的であると考える.本稿では,筆者自身の体験を通して,基礎研究や臨床研究の成果を製品化し,臨床応用に至らせる過程と,その手段としての起業について論述する.

Copyright © 2026, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.

