Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
骨粗鬆症性椎体骨折は,高齢化が進むわが国において頻度の高い脊椎外傷であり,整形外科診療における重要な課題の1つである7).多くは軽微な外傷,あるいは明らかな外傷歴を伴わずに発症し,急性期には強い背部痛や腰痛を呈する17).一方で,適切な診断や治療介入が行われない場合,疼痛の慢性化,脊柱後弯変形の進行,姿勢・歩行能力の低下を招き,日常生活動作(activities of daily living:ADL)や生活の質(quality of life:QOL)を著しく損なうことが知られている8,19).さらに椎体骨折は,二次骨折の発生リスクを高めることが明らかとなっており,再骨折の連鎖は要介護状態への移行や死亡率の上昇にも関与する9,10).すなわち,椎体骨折は単なる局所病変ではなく,患者の生命予後や社会的自立にまで影響を及ぼす全身性疾患として捉える必要がある.
近年,骨粗鬆症治療薬の進歩や画像診断技術の向上により,椎体骨折に対する保存治療および手術治療の選択肢は拡大している11).しかしながら,臨床現場においては,計画管理病院(主として急性期病院)での疼痛管理や入院治療に主眼が置かれ,退院後のフォローアップや再骨折予防,機能回復に関する取り組みが十分に継続されていないケースも少なくない.特に,計画管理病院,回復期リハビリテーション病院,維持期診療所の間で診療情報が分断されることにより,骨粗鬆症治療の中断やリハビリテーション介入の遅れが生じることが,臨床上の大きな問題として指摘されている2,6).
このような背景のもと,椎体骨折を「急性期治療で完結する疾患」として捉えるのではなく,発症から回復期,さらに維持期・在宅医療までを見据えた連続的な医療提供体制を構築する必要性が高まっている.その具体的な手段として注目されているのが「椎体骨折地域連携パス」である.地域連携パスは,診療の標準化と情報共有を通じて医療機関間の役割分担を明確化し,患者に対して切れ目のない医療を提供することを目的としている.
本稿では,骨粗鬆症性脊柱障害の治療戦略の一環として,椎体骨折地域連携パスの導入意義を概説するとともに,その基本構造,実際の運用方法,導入による臨床的・社会的効果について述べる.なお,本稿で紹介する椎体骨折地域連携パスは,筆者らが勤務する浜松市医療圏において実際に運用されている「浜松椎体骨折地域連携パス」を基盤としており,計画管理病院,回復期連携病院,維持期診療所が連携した実践的取り組みである.さらに,保存治療から手術治療,そしてその先の再骨折予防・生活支援までを包含する包括的マネジメントの視点から,椎体骨折地域連携パスの今後の展望について概説する.

Copyright © 2026, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.

