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今回の増大号は,「『胃と腸』式読影問題集2025」をテーマとした.この「『胃と腸』式読影問題集」は,早期胃癌研究会に準じた「誌上“症例検討会”」の形式で,設問とその解説によって,画像所見と切除標本の肉眼所見・病理組織学的所見の対比により画像診断の理解を深めること,鑑別診断の想起から最終診断に至る思考過程を重視した「考える画像診断」能力の向上を目指すことをコンセプトに企画されたものである.2021年に初めて特集され(56巻9号),その後,2023年の「基礎と応用」編(58巻4号)と「応用と発展」編(58巻10号)では増大号として特集を重ねてきた.本テーマが好評を博してきた理由の一つとして,美麗な臨床画像から成る設問と「提示症例の画像所見を詳述して診断過程と最終診断を述べ,診断の診断過程での重要な点や鑑別診断を言及する」解説を通して,見て楽しめるだけでなく,病変の成り立ちを病理組織構築から理解することの有用性や思考過程を重視した画像診断の重要性が示されたことが挙げられる.本増大号は2年ぶりの「『胃と腸』式読影問題集」として,これまでと同様の「誌上“症例検討会”」のスタイルを踏襲しながら,消化管形態診断のup-to dateを目標に大幅なバージョンアップを図ったものである.
近年,画像強調内視鏡(image enhanced endoscopy ; IEE)の普及により,消化管形態診断,特に腫瘍性病変の診断が進歩しつつある.IEEすなわちNBI(narrow band imaging),BLI(blue laser imaging),LCI(linked color imaging)などの有用性が証明され,早期癌の拾い上げ診断・鑑別診断能の向上,質的診断精度の向上が実現されつつある.消化管各臓器においてIEEの有用性が示唆されているが,食道癌における日本食道学会拡大内視鏡分類(JES-SCC分類),Barrett腺癌におけるJES-BE分類,胃癌におけるvessel plus surface(VS)classification system,大腸癌におけるJNET(the Japan NBI Expert Team)分類など,臓器ごとに診断のプロセスや評価法あるいは有用な場面が異なることに留意が必要である.読者諸氏におかれては,本増大号の設問の中で,診断のプロセスと評価法・判定を確認していただきたい.そして,IEEを含む内視鏡所見と病理組織学的所見の対比を通じて内視鏡所見を裏付ける病理組織学的所見を確認し,病変の成り立ちを組織学的構築から理解することにより,内視鏡診断と病理診断の乖離が少なくなることを期待したい.

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