特集 ライフサイクルからみた小児期の逆境体験(ACEs)および肯定的体験(PCEs)
特集にあたって
金生 由紀子
1
1全国療育相談センター
pp.239
発行日 2026年3月15日
Published Date 2026/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810680030239
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小児期逆境体験(adverse childhood experiences:ACEs)が,発達過程はもちろん成長後の心身の健康に大きな影響を及ぼすことが明らかとなり,ライフサイクルをまたぐ連鎖に関する検討も重要となっている。ただし,ストレスを全くなくすことはできないので,逆境を体験してもその悪影響を軽減させたり,むしろ発達の機会としたりする関わり方を探ることが考えられる。その際に,小児期の肯定的体験(positive childhood experiences:PCEs)がACEsの影響を緩和できるのか,できるとしたらどのような関わり方がありうるのかなど両者の関係を検討することが有意義であり,同時に,本人および環境の両面を総合することで検討が深まると思われる。ここでいう環境とは,家族など身近な周囲から社会全体まで幅広く考えられる。
そこで本特集は,ACEsとPCEsが絡み合いつつ及ぼす影響について,発達的観点および生物学的・心理社会的観点から照らし出していただけたらと考えて企画した。まず,ACEsの概論から国際的な知見とわが国の現状を紹介いただき,次にライフサイクルに沿って,それぞれの時期に生じやすいメンタルヘルスの問題や生活上の課題との関連でACEsの影響を論じていただき,治療や支援への示唆をいただいた。また,当事者の語りを通して,サバイバーが置かれている現状について問題提起と臨床家への提言が寄せられた。そして,ライフサイクルをまたぐ連鎖に焦点を当てて,心理社会的観点および生物学的観点からACEsのメカニズムに迫り,連鎖防止への働きかけにおけるPCEsの可能性も示していただいた。

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