特集 周産期メンタルヘルスとレジリエンスの科学—予防と回復を支えるエビデンスと実践
特集にあたって
山下 洋
1
1九州大学病院子どものこころの診療部
pp.1311
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810670101311
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2007年に『Lancet』誌に掲載された標語に倣い,2014年に同誌で周産期メンタルヘルスの特集が組まれた際に“No health without perinatal mental health”というタイトルが掲げられてから,10年が経過した。このフレーズは,周産期メンタルヘルスがライフコースの健康発達において重要であることを端的に示すものであった。以降の10年間で,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックなど,生物・心理・社会的インパクトをもたらす未曾有の出来事を世界が経験し,子育て世代のメンタルヘルスに関する多くの課題が可視化された。
一方,日本では東日本大震災をはじめとする多くの災害や高齢化など,急激な成育環境の変化を経験してきた。ライフコースを通じたメンタルヘルスの課題に関する調査や,予防と回復に向けた取り組みが継続され,エビデンスと臨床経験が蓄積されている。これらは,超少子化社会における妊娠・出産・子育てに伴うメンタルヘルスの課題の解決に向けた糸口を提供する。周産期メンタルヘルスは次世代のライフコースの出発点であり,子育て世代にとっては受胎前から続く「親になる過程」と,「子育ての経験の共有」を支える重要な柱である。

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