増刊号 周術期管理マニュアル—保存版
Ⅲ術式別の術前・術中・術後管理
膵
膵全摘術
村田 泰洋
1
,
水野 修吾
1
Yasushiro MURATA
1
1三重大学肝胆膵・移植外科
pp.192-195
発行日 2025年10月22日
Published Date 2025/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800110192
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膵全摘術は膵癌,主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),多発膵内分泌腫瘍,転移性膵腫瘍,さらには膵癌切除後の残膵再発などに対して施行される根治的手術である.近年,強化インスリン療法および高力価膵消化酵素製剤の導入により,血糖および栄養管理の精度は飛躍的に向上し,膵全摘術の適応は従来に比べて拡大しつつある.しかしながら,膵全摘術では膵内・外分泌機能が完全に喪失するため,適切な管理がなされない場合,患者のQOLや長期予後に深刻な影響を及ぼす可能性がある.そのため,術前には適応の妥当性を含めた綿密な評価が不可欠である.特に高齢者や認知機能障害を有する患者など,自己管理能力に懸念のある症例では,インスリン自己注射の可否も含めた慎重な適応判断が求められる.
膵全摘術後の周術期管理の基本は,消失した膵内・外分泌機能を強化インスリン療法および高力価膵酵素製剤によって代替し,安定した栄養摂取を確保しつつ,血糖変動,特に低血糖発作のリスクを最小限に抑えることである.このためには,外科医のみならず,糖尿病専門医,栄養士などによる多職種連携チームによる包括的な介入が不可欠である.

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