連載 デジタルアウトリーチの進化が切り拓く新たな可能性・第3回
バーチャル学会が切り拓く新時代の学術交流
亀岡 嵩幸
1
Takayuki Kameoka
1
1九州大学芸術工学研究院メディアデザイン部門
1Faculty of Design, Kyushu University
キーワード:
VRSNS
,
メタバース
,
学会
,
学術交流
Keyword:
VRSNS
,
メタバース
,
学会
,
学術交流
pp.1057-1060
発行日 2025年10月10日
Published Date 2025/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530101057
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はじめに
オンラインのデジタル空間に人々がアバターの姿で集まり,議論や交流を行う.そのようなサイエンスフィクション(science fiction:SF)の世界は,すでにヘッドマウントディスプレイ(head-mounted display:HMD)とソーシャルvirtual reality(VR)の普及によって実現している.バーチャル学会1)はまさにそのような交流を,学術を対象として行うユーザーイベントである.
バーチャル学会はソーシャルVRサービスであるVRChat註1,cluster註2を用いて,同時に100人以上が遠隔地より参加することができる.2019年より開始した本イベントは,2025年6月時点で6回を開催し,第7回目となるバーチャル学会2025に向けて鋭意準備が進んでいる.バーチャル学会は,ソーシャルVRでの開催を前提としている点,発表内容の分野を問わない点,一般市民の参加を受け入れている点で既存の学会とは異なる.これらの要素はひとえにソーシャルVRの社会応用を促進することを目的としており,学術をキーワードとしてソーシャルVRの新たな価値を見出していく.
本稿では,まず従来の学術交流の歴史を振り返り,価値の変遷や開催形式について整理する.次に,バーチャル学会開催の経緯や背景となるVR技術とソーシャルVRの発展について概説し,バーチャル学会開催の工夫や特徴について紹介する.最後にバーチャル学会の開催を通してみえてきたソーシャルVRと学術交流の相乗効果や,学会を0から立ち上げるという経験から得られた学会・学術交流の意義について整理する.

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