連載 医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・53
証拠保全の決定書が届いたら
三浦 彰夫
1
1弁護士法人 色川法律事務所
pp.734-739
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038523770840090734
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■1 証拠保全とは何か
民事訴訟は,権利義務に関して生じる紛争に法を適用してその権利義務の存否を確定する手続きです.そこでは,各当事者は,その権利義務の根拠(または障害)となる事実を主張して,当事者間で争いのある事実については,証拠により,裁判所が真偽を認定します.例えば,医療過誤に基づく損害賠償請求事件であれば,医療過誤があったかどうかが損害賠償請求権の根拠となりますから,そこに争いがあれば,裁判所が証拠により認定することが必要となるということです.
民事訴訟では,証拠が重要です.しかし,訴えを提起して訴訟を始めるまでにも調査などに時間がかかりますし,訴訟の手続き自体も長期にわたることがあります.そこで,あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認められるときに,あらかじめ証拠調べをすることができます★1.この手続きが証拠保全です.

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