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連載講座 細胞の完全理解は可能か?—生物物理学的視点からの問い・4
細胞の偶然と必然
“Le Hasard et la Nécessité” of a cell
市川 一寿
1
Ichikawa Kazuhisa
1
1株式会社True Cell Simulations
キーワード:
視細胞
,
リガンド-受容体
,
サーカディアンリズム
,
遺伝子発現
,
進化
Keyword:
視細胞
,
リガンド-受容体
,
サーカディアンリズム
,
遺伝子発現
,
進化
pp.375-380
発行日 2026年8月15日
Published Date 2026/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310770040375
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台湾から日本へ渡りをするアサギマダラという蝶は,途中大分県沖の姫島という島に立ち寄り,フェロモンの材料が含まれるスナビキソウという花の蜜を吸うとのことである。このことを初めて知ったとき最初に脳裏に浮かんだのは,「何という偶然でアサギマダラの細胞はスナビキソウの花の蜜に出会ったのか」であった。
しかし,偶然は細胞にとって特別なことではない。なぜなら,いつどんな物質と出会うかを,細胞はほとんど予測できないからである。細胞の基本は偶然である。こんなことは今更言うまでもない。だが,偶然だけでは細胞として機能できない。偶然から逃れる最も強力な方法は,空間を限定することである。そうして細胞が生まれた。しかし,それは完全ではなく,偶然の度合が減っただけである*1)。フェロモンの材料とアサギマダラの細胞は,地球上の広大な空間にまばらに存在していたため,この2つの出会いは偶然となった。

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