Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
動物の体は,各々が1つのユニットとして機能する器官システム(器官系)によって構成されていると捉えることができる。しかし,これらのシステムは孤立して機能しているわけではなく,密接に連携し,協調して体の恒常性を維持し,生物の活動を支えている。循環器系は血液循環により動物の体を支える器官システムであり,神経系や内分泌系などの他のシステムと連携して恒常性を維持している。例えば運動は,筋肉組織内の血管の応答だけでなく,交感神経の活性化による心臓,動脈,静脈の応答によって維持されている。一方で,交感神経の活性化は,同時に消化系,免疫系や代謝系の機能変動ももたらす。この緊密な器官システム間,あるいは臓器間の連携機序が動物の生存と活動を維持しているのだが,一方で緊密な連携は臓器障害を多臓器へ波及させる結果にもなる。臨床的には心腎連関に代表される疾患の間の連関機序が,疾患を進行させ,また複数疾患の併発により治療を難しくする。
各システム間の情報のやりとりを担う主要な配線は血管と神経である1)。血管を介しては,ホルモンやサイトカインをはじめとする生理活性分子,代謝産物,microvesicleといった細胞に由来する様々な物質に加え,免疫細胞をはじめとする細胞が搬送される。神経系,特に自律神経も臓器・器官システムの情報を伝達する。循環器系においては,自律神経と,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(renin-angiotensin-aldosterone system;RAAS)を中心とする内分泌系が主要な制御系として研究されてきた歴史があり,また神経内分泌系は心不全の主要な治療標的ともなっている。一方で,最近の研究は造血・免疫系や,古典的なホルモンには含まれない多様なサイトカインによる新たな相互作用や連携機構の研究も進んでいる。本稿ではまず心腎連関を例に,免疫系が関与する幾つかの連携機序について概説したい。

Copyright © 2025, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.

