連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史SEASON 2・7
人々の暮らしを舞台にした西陣の地域医療史—「地域医療」は町ぐるみの運動から
西沢 いづみ
1
1立命館大学地域健康社会学研究センター
pp.70-74
発行日 2026年1月15日
Published Date 2026/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.036851870900010070
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はじめに
現在、厚生労働省では、2040年ごろを見据えた新たな「地域医療構想」の具体的内容や医療計画の策定などが検討されている。人口構成や医療ニーズの変化に応じて、各地域における医師偏在の是正や病床数の削減、そして在宅医療やリハビリテーションなど、医療・介護を効率的に地域に提供するのが目的である1)。
しかし、現状では患者や住民たちは、医療構想の内容に自分たちの生活を合わせざるを得ない側面もあることは否めない。
「地域医療」という言葉は、武見太郎がコミュニティー・メディシンの訳語として、早期に使用した事例が知られている2)。しかし、コミュニティーには「地域」という地理的要素だけではなく、そこに住む人々の暮らしがあるのではないだろうか。暮らしとは、医療も介護も含めた生活そのもので、命が紡がれている場でもある。その意味において、「地域医療」とは医療の技術や提供方法の領域だけではなく、「地域」における人々の暮らしの分野でもあると言えるだろう。
実際に、住民自らが担い手となって、医療・保健・福祉による生活改善を行い、地域の健康は地域で守っていく動きが日本の幾つかの箇所で見られた。
今回から3回にわたり、人々の暮らしからみる医療への取り組みと医療施設の変容に注目しその歴史を振り返ってみたい。

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