連載 All about 日本のワクチン・28
痘瘡ワクチン
氏家 無限
1
1国立国際医療研究センター国際感染症センター
pp.364-367
発行日 2025年4月15日
Published Date 2025/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.036851870890040364
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1.当該疾患の発生動向
サル痘ウイルス(monkeypox virus: MPXV)は、1958年にデンマークの研究所でカニクイザルから初めて分離され1)、1970年にコンゴ民主共和国でヒト感染症例のエムポックス(旧称:サル痘)が報告された2)。MPXVは、痘そうの原因病原体である天然痘ウイルスやワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルス属のDNAウイルスであり、突然変異による感染性の大幅な変化は少ないとされる。
2022年5月、これまで感染循環がアフリカ大陸に限定的であったが、流行地域である西アフリカ(クレードⅡ)および中央アフリカ(クレードⅠ)以外の国々でも、新たな感染拡大が報告された。この流行は、1980年の天然痘根絶による天然痘の予防対策の中断から、エムポックスに対する集団免疫が低下したこと等を背景に、後方視的評価では、クレードⅡbのMPXVが2017年ごろよりナイジェリアから流行を認め3)、男性と性交する男性(men who have sex with men: MSM)を中心に感染が拡大した点が特徴的である。また、クレードⅡbによるMPXVの感染はヒトでのみ検出されており、ヒトに適合したウイルスと評価されている4)。

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