特集 感染病の国際的動向とその対策
「全世界痘瘡根絶計画」の発足から完成まで
北村 敬
1
1国立予防衛生研究所痘瘡ウイルス室
pp.855
発行日 1979年12月15日
Published Date 1979/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205979
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1979年10月26日,WHO(世界保健機構)は,エチオピア,ソマリア,ジブチ,ケニアの4カ国の痘瘡根絶確認作業を終え,全世界から痘瘡が根絶されたことを宣言した.数千年来人類を苦しめてきた,感染症の中でも最も重大なものを地球上から消滅させるという,歴史的な大事業が完成したわけである.この「全世界痘瘡根絶計画」(Global Smallpox Eradication Programme)はどのようにして成立し,どのようにして成功したのであろうか.
痘瘡はウイルス性出血熱の一種で,罹患者の30〜40%が全身の発痘と血管障害で死亡する.しかし,1798年,Jennerにより開発された予防接種(種痘)の効果は確実で,全国民を定期種痘する政策により1950年代までに多くの先進国においては痘瘡根絶を達成していた.熱帯地方,開発途上国などでは,繰り返し試みられた国民皆種痘政策にもかかわらず,衛生行政組織の不備による種痘もれ人口の残存,冷蔵設備の不備によるワクチンの失活などが原因で,Jenner当時とあまり変わらない大流行が根強く残っていた.1955年,イギリスのCollierが凍結乾燥ワクチンを開発したことにより,種痘は技術的にきわめて容易なものとなった.
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