連載 All about 日本のワクチン・25
A型肝炎ワクチン
清原 知子
1
1国立感染症研究所ウイルス第二部第五室
pp.71-74
発行日 2025年1月15日
Published Date 2025/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.036851870890010071
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1.当該疾患の発生動向
A型肝炎はA型肝炎ウイルス(hepatitis A virus: HAV)に汚染された飲食物の経口摂取が主な感染ルートであり、その流行状況は国や地域の衛生環境に影響される1)(図1)2)。
上下水道などの公衆衛生インフラの整備が遅れている地域ではHAVが常在し、多くの住民は幼年期に感染し、防御抗体を獲得する。幼年期の感染は不顕性に終わることが多く、疾病としてのA型肝炎が社会問題になることは少ない。衛生環境が改善するにつれて幼年期のHAV感染は減少し、感染年齢の中心は青壮年期に移動する。感染年齢が上がると有症者が増加し、A型肝炎の流行もみられるようになる。さらに衛生環境が整うとA型肝炎の発生は減少する。感染機会が減少するため、防御抗体を持たないHAV感受性者が増加する。感染者の多くは散発例で、その他にはHAV流行地への旅行者、男性と性的接触を行う男性(men who have sex with men: MSM)、患者家族などの濃厚接触者がハイリスク群として挙げられる1)。
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