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はじめに
近年,“人工知能(artificial intelligence:AI)”という言葉を聞かない日はないほど,AI技術は私たちの社会に浸透しています.AIとは,コンピューターが人間のように考えたり,学習したり,問題を解決したりできるようにする技術のことです.特に最近のAIブームを牽引しているのは,コンピューターに人間が明示的な指示を与えずに,データから自動で学習させる“機械学習(machine learning:ML)”を用いて作成したAIであり,その中でも特に注目されているのが“深層学習(deep learning:DL)”です.
DLは人間の脳の神経回路を模倣した,多層構造を持つネットワークを使って学習する新たな手法です.大量のデータをコンピューターに与え,そのデータの中に隠されたパターンやルールをコンピューター自らに学習させることで,画像認識,自然言語処理,予測分析など,多岐にわたる複雑なタスクを驚異的な精度で達成することができるようになりました.その結果,私たちの日常生活で使用する多くの製品にAIが搭載されるようになり,AI技術は私たちの生活をより便利に,効率的に変え続けています.もちろん医療分野も例外ではありません.web問診からの疾患推定や診療科の提案,患者の病歴や画像データからの診断支援,創薬開発の効率化など,すでにさまざまな領域でAIの活用が始まっています.特に臨床検査分野は,長年にわたり経時的に蓄積されてきた膨大な患者データを扱うという特性から,AI技術との親和性が極めて高いとされています.AIが臨床検査装置やワークフローへと組み込まれることで,業務の効率化はもちろんのこと,検査精度向上や,これまで見過ごされてきた新たな疾患の発見や治療に関する知見の獲得などが期待されています.
本稿では,臨床検査技師(以下,技師)の皆さんが日常の検査現場においてAIとどのように関わり,私たちの将来の医療をどのように変えていくのか,具体的な事例を交えながら紹介していきます.

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