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はじめに
顔面神経麻痺の原因は,特発性,耳炎性,感染性,外傷性,医原性,腫瘍性,全身性,先天性,神経疾患などの末梢性と脳血管障害など中枢性に分けられ,多岐にわたる.呼吸機能検査において,顔面神経麻痺の外科的治療における術前検査に限らず,顔面神経麻痺を合併しているその他の疾患の術前検査もしくは呼吸器疾患の精査などでも顔面神経麻痺がある患者に遭遇することがある.
顔面神経麻痺で起こる症状としては,“眉が動かない”“目が閉じにくい”“口が曲がってしまう”もしくは“水などが口から漏れ出てしまう”などが多く,顔面の筋肉が動きづらくなることに由来する.特に口角の動きが悪くなることが知られており,顔面神経麻痺の評価方法として柳原法やHouse-Brackmann法があり,その中でも口角の動きはポイントになっている.顔面神経麻痺をもつ患者の療養上,リハビリテーションやストレッチなどが重要であるとされている.
呼吸機能検査において生じる問題点としては,口が閉まらないことで,くわえたマウスピースの脇から息漏れが生じることである.息漏れに対して,こちらで漏れを塞ぐ,または患者に塞いでもらうことが必須となる.特に,機能的残気量(functional residual capacity:FRC)測定や肺拡散能(diffusing capacity of the lung for carbon monoxide:DLCO)測定,単一呼吸法(クロージングボリューム測定)において,息漏れは単純な空気の漏れではなく,ガス分析に影響があるため,息漏れのあるデータは採用できないことが多い.また,これらの患者は息漏れさえなければ問題なく検査可能であるため,息漏れへの対応や対策は十分にすべきと考える.
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