増大号特集 深掘り! エッセンシャル漢方—1対1対応の一歩先へ
特集にあたって
樫尾 明彦
1,2
1調布東山病院総合診療科
2調布東山病院内科
pp.1740-1741
発行日 2025年10月10日
Published Date 2025/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002576990620111740
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まず,筆者の経験上,漢方の学習へのニーズはきわめて多様であると感じる.例えば,筆者が自身よりも若手の医師に漢方のイメージを尋ねてみると,「大建中湯(だいけんちゅうとう)って消化管術後にルーチンで出す処方ですよね,漢方薬だったんですか」「学生時代の講義で,漢方とは何かと講師の先生に聞かれ,“中国から伝わった……”と答えたら,“違います! 漢方は日本独自の伝統医学です!”と激しく訂正されてから,漢方へのハードルが上がったまま,今に至ります」などといった反応がある一方で,「漢方って,総合診療とかなり親和性がありますよね」「もっと早く漢方を学んでみたかったです」など,漢方を学びたいという関心の高さを感じる反応もあり,漢方を学ぶモチベーションには幅広い背景やグラデーションがあると考えられる.
また,最近は上記の大建中湯=イレウス予防をはじめとして,芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)=こむら返り,葛根湯(かっこんとう)=風邪の初期など,症状と1対1対応の処方への理解は進みつつあるが,それらの効果が乏しかった場合に,どのように考え,次にどのような漢方薬を出せばよいかについては,学習する機会は多くないのが現状ではないだろうか.今回,1対1対応の漢方薬の理解から一歩先のイメージを共有することを目標に,特集を企画した.“エッセンシャル”と名付けたのは,医療機関によっては院内の採用薬の数に上限があり,採用できる漢方薬の数にも限りがあると思うが,“この漢方薬だけは”ぜひ院内で処方できるように検討してもらいたいと思うものを厳選したことが所以である.

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