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あとがき
阿部 理一郎
pp.620
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002149730790080620
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論文を書くことの意味について,改めて考えてみました.それは,自らが臨床の現場で出会った症例や,日々の診療を通じて得た気づきをもう一度深く見つめ直し,その中から少しでもこれまで明確に理解されてこなかったことや,十分に検討されてこなかった視点を抽出し,論文という形にして伝えるということです.
一つ一つの症例や観察が,たとえ目新しい発見でなくとも,過去の報告と比較したときに「わずかに異なる」点を見つけ,それがなぜ生じたのか,どういった臨床的意味を持つのかについて考察を加えるだけでも,医学に対する貢献の一端となりえます(多分これはAIではできないと信じたいです).もちろん,それがすぐに大きな意味のあることなるわけではありません.しかし,その小さな差異に気づく感性と,それを掘り下げて意味づけようとする行為こそが,医療の発展の礎を支えているのだと思います.

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