書籍・雑誌概要

2024年5月に改訂された『変形性股関節症診療ガイドライン（第3版）』では，診断・治療に関する新たなエビデンスが加わった．人工股関節全置換術（THA）はインプラントの改良や手術手技の向上，新しい手術支援技術の導入により術後成績は向上し，施行件数は年々増加している．本号では非外傷性の成人股関節疾患に焦点を当て，各疾患の病態・治療経験からTHA，骨切り術などの手術術式まで幅広く取り上げた．

目次

【内容目次】Ⅰ．疫学・病態
　1．変形性股関節症
　　変形性股関節症はいつ発症するのか
　　寛骨臼形成不全股における大腿骨の形態学的特徴
　　なぜ人工股関節全置換術後に腰痛が改善するのか―人工股関節全置換術前後の脊椎アライメント変化
　2．大腿骨頭壊死症
　　診療群分類包括評価データからみた大腿骨頭壊死症治療の推移
　　腎移植における併用免疫抑制剤と大腿骨頭壊死症発生の関係
　3．感染性疾患
　　股関節症に潜む炎症性疾患
Ⅱ．治療
　1．保存療法
　　1）運動療法
　　　変形性股関節症に対する新たな運動療法―3Dジグリング
　　　股関節唇損傷に対する徒手療法の可能性
　　2）関節内注入
　　　末期変形性股関節症に対するautologous protein solution注射の治療成績
　2．関節温存手術
　　1）骨盤骨切り術
　　　小児股関節疾患と骨系統疾患および麻痺性股関節疾患後遺残変形に対するChiari骨盤骨切り術の治療経験
　　　最小侵襲をめざした寛骨臼骨切り術―縫工筋内側筋間アプローチによるspherical periacetabular osteotomy
　　2）関節鏡視下手術　関節鏡視下手術
　　　腸骨大腿靱帯を温存したスキップ関節包切開を用いた股関節鏡視下手術の術後短期臨床成績―ポータル間関節包切開との後ろ向き比較研究
　　　大腿骨寛骨臼インピンジメントに対する股関節鏡手術の術前計画およびコンピュータ支援技術
　3．人工股関節全置換術
　　1）アプローチ
　　　仰臥位前方系アプローチにおけるBurch-Schneider reinforcement cageの設置方法　
　　　組織間温存前方進入法―人工股関節全置換術アプローチ
　　　Condor RotexTableを使用した前方アプローチによる初回人工股関節全置換術の短期成績と術中の下肢伸展・内転・外旋角度の検討
　　　横切開を用いた側臥位前側方進入人工股関節全置換術の方法と術後成績
　　2）セメント人工股関節
　　　セメント人工股関節全置換術の現状と今後の課題
　　　インプラントの進化からみる再手術率の大幅な改善― Double taper型チタン製ステムと高度架橋ポリエチレンカップを用いたセメント人工股関節全置換術の長期成績
　　3）手術支援
　　　側臥位人工股関節全置換術における非侵襲ピンレス拡張現実ナビゲーションOrtho Panther Lateralの使用経験とその有用性・課題
　　　術中の骨盤傾斜を補正するカップ設置支援デバイスHipPointer―視覚化による直感的かつ精度の高いカップ設置
　　4）長期成績
　　　旧来のポリエチレンライナーの摩耗に対して摺動面交換を行った人工股関節再置換術の成績
　　　Modulus stemを使用し15年以上経過した人工股関節全置換術のX線変化
Ⅲ．術後合併症への対応
　1．手術部位感染（SSI），人工関節周囲感染
　　人工股関節周囲感染診断と治療を目的とした全自動多項目遺伝子検査（The BIOFIRE joint infection panel）
　　Antibiotic-impregnated bone graftsによる人工股関節周囲感染治療のstate-of-the-art
　　人工股関節周囲感染診断と治療のための骨シンチグラフィ・single photon emission computed tomography／CT
　　ビーズ破砕法をデオキシリボ核酸抽出過程に併用した人工股関節周囲感染に対する迅速遺伝子診断
　　高濃度ゲンタマイシンを用いた持続的局所抗菌薬灌流療法による人工股関節周囲感染の治療成績
　2．インプラント周囲骨折
　　高齢者の日常生活動作の維持を目標とした大腿骨ステム周囲骨折の治療
　　大腿骨ステム周囲骨折に対するセメントロングステム再置換術
　3．脱臼
　　人工股関節全置換術後の後方脱臼に対する新しい整復方法―牽引手術台法
　4．術後疼痛管理
　　人工股関節全置換術における術前の睡眠障害と術後疼痛の関係
Ⅳ．術後後療法，リハビリテーション
　1．術後スポーツ活動
　　人工股関節全置換術後のスポーツ復帰をめざしたリハビリテーション
　　人工股関節全置換術後のスポーツ復帰に向けたリハビリテーション