日本内視鏡外科学会雑誌 21巻4号 (2016年7月)

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◆要旨:Laparoscope-assisted colectomy (以下,LAC)の際に最大の創部となるのは切除腸管を体外へ引き出す小切開創であり,当科では臍部に縦切開(vertical incision : 以下,VI)を置いてきた.小切開創の整容性を追求するため,2012年8月にZigZag切開(ZigZag incision : 以下,ZI)を導入した.今回,ZIを従来のVIと比較して,術中術後の創部への影響を検討した.対象は2014年5月から9月に当科でLACを行った42症例で,術前に無作為割り付けを行い,小開腹創および術後創の評価を行った.ZIでは小開腹時の横幅が大きくなる傾向は認めたが,皮切あたりの面積では差を認めなかった.縮小率では,ZI群で26.3%,VI群で17.0%(P=0.04)であり,ZIで術後創の縮小を認めた.本研究によりZIはLACにおける臍部の小切開創を縮小しうる可能性が示唆された.

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◆要旨:患者は30歳代女性.近医にて下大静脈背面の巨大後腹膜腫瘍を指摘され紹介となった.神経原性腫瘍の術前診断となり,腹腔鏡補助下に摘出の方針となった.横隔膜直下で腫瘤と下大静脈の癒着が強く,鉗子のみでの操作が困難となり,約9cmの開腹創を加えGelPortを挿入し,用手的牽引によって剝離を完遂し,同創部より腫瘍を摘出した.最大径15.5cm,総重量730gの神経節神経腫と病理組織診断された.大血管に密接した大きな後腹膜腫瘍こそ,腹腔鏡下手術ならではの視野展開・拡大視効果とHALS(hand-assisted laparoscopic surgery)を併用することで安全な手術が可能であることが示された.

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◆要旨:患者は36歳,男性.食後の腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.腹部造影CT検査で胃と十二指腸の著明な拡張とSMV rotation signを認めた.上部消化管造影検査で十二指腸狭窄を認め,下部消化管造影検査では全大腸が左側に存在した.以上からLadd靱帯による十二指腸狭窄症状を伴ったnonrotation typeの腸回転異常症と診断し,単孔式腹腔鏡下Ladd手術を施行した.Ladd靭帯の切離,上腸間膜動脈基部の開放と虫垂切除を行い,腸管をnonrotationの状態として手術終了とした.単孔式腹腔鏡下Ladd手術は,多孔式手術で難渋する鏡映像操作がなく整容性を含めて有用な術式になりうると考えられた.

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◆要旨:患者は51歳,男性.肺癌検診のCTで脾門部に50mmの脾動脈瘤を指摘された.脾摘出を伴う脾動脈瘤切除術を予定した.動脈瘤破裂に備え,膵脾の授動前に脾動脈の分枝を先行切離し,膵体部で脾動脈をいったん確保した後に膵尾部で脾動脈を切離する方針とした.4ポートで手術を行った.左胃大網動脈,短胃動脈,後胃動脈を切離後,予定通り脾動脈を確保し,切離した.膵尾部と脾動脈瘤の剝離と脾の授動後に脾静脈を切離し,切除しえた.腹腔鏡下に切除した本邦で最大の脾動脈瘤であった.脾動脈確保部は術前画像検査で予測可能であった.動脈瘤破裂の予防と破裂時の出血を抑える術式の工夫で,脾動脈瘤は腹腔鏡下に安全に切除できると考えられた.

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◆要旨:患者は68歳,男性.既往歴は糖尿病.発熱の原因精査目的に入院した.腹部造影CTで,肝膿瘍破裂による腹膜炎と診断し,腹腔鏡下洗浄ドレナージ術を施行した.血液培養ではKlebsiella pneumoniaeを検出した.術後10日目に右眼内因性眼内炎となり,大学病院へ転院し水晶体摘出術,硝子体切除術を施行され,眼科術後10 日目で当院へ再入院した.その後問題なく,初回の入院から第30病日に退院した.肝膿瘍破裂の汎発性腹膜炎に対し,腹腔鏡下手術で救命しえた.しかし,腹腔内圧上昇(気腹)が,細菌汚染を増悪し,内因性眼内炎の発症に関与した可能性が示唆されたため,若干の文献的考察を加え報告する.

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◆要旨:患者は43歳,女性.3年前に腹腔内に囊胞性病変を指摘され,最近になり腹部膨満を自覚し,近医で囊胞性病変の増大を認めたため加療目的に当科紹介となった.腹部CTおよびMRI検査で22×16×35cmの巨大後腹膜囊胞であったが,囊胞内結節や他臓器浸潤を疑う所見を認めなかったため腹腔鏡下切除術を施行した.術中に囊胞穿刺による内容液吸引と穿刺口結紮を行い内容液の腹腔内散布なく囊胞の虚脱を図り切除を行った.病理組織学的検査でMüller管囊胞の診断で,悪性所見は認めなかった.悪性疾患の可能性が低い巨大後腹膜囊胞に対しては,囊胞の大きさにかかわらず適切な方法で囊胞虚脱を図ることで腹腔鏡下切除術が可能であると考えられる.

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◆要旨:患者は75歳,女性.整形外科術前の胸部X線で右下肺野に異常を指摘され,CTでMorgagni孔ヘルニアと診断された.EZトロッカー2本とEZリンクを刺入したEZアクセスを臍に装着し単孔式腹腔鏡下にSymbotexTM composite meshを用いて修復した.ヘルニア囊は切除しなかった.メッシュ固定にはEND UNIVERSAL Hernia Staplerを用い,結紮縫合を追加した.単孔式ではステイプラーの挿入位置がより尾側になるため操作性は良好であった.術後経過は良好で,術後5日目に退院し,以後再発を認めていない.Morgagni孔ヘルニアに対する本術式は手技やデバイスの工夫により低侵襲かつ安全,簡便に施行可能と考えられた.

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◆要旨:患者は22歳,男性.上部・下部消化管内視鏡,CTで原因不明の貧血に対し2014年1月にカプセル内視鏡(CE)を施行し,Crohn病(CD)が疑われたが,CEは滞留した.3月にダブルバルーン内視鏡で回腸に狭窄病変を認めたが,疼痛が強く拡張困難であったため,腹腔鏡補助下に手術を施行した.Bauhin弁から30cm口側に狭窄病変と,その15cm口側に内腔にCEが迷入した回腸重複腸管を認め,狭窄病変から重複腸管まで切除した.病理組織診断はCDであった.CEを施行する際は消化管の開通性の評価が重要であり,滞留の際は狭窄のみならず憩室や重複腸管も念頭に置く必要があると考えられた.また,その際に腹腔鏡下手術は低侵襲であり,診断かつ治療に有効な手段と考えられた.

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◆要旨:患者は92歳,男性.他疾患の精査中に嘔気,嘔吐,腹痛を認めたため精査を施行した.腹部理学所見では臍周囲に圧痛を認める程度であったが,腹部造影CT検査にて腸閉塞像とwhirl like patternが認められた.小腸軸捻転症と診断し,入院同日に単孔式腹腔鏡下手術を施行した.回腸は時計回りに180°捻転していた.腹腔鏡下に捻転を整復し,全小腸,腹腔内を観察した.先天的,後天的要因がないことを確認して,原発性小腸軸捻転症と診断した.術後経過は良好で,術後9日目に軽快退院となった.本邦では原発性小腸軸捻転症は稀な疾患であるが,単孔式腹腔鏡下手術を施行することでより低侵襲な治療ができると考えられた.

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◆要旨:患者は77歳,女性.右季肋部痛を主訴に来院し,急性胆囊炎の診断であったが手術に同意が得られなかったため保存的治療を行い軽快した.初回治療9か月目に胆囊頸部の結石嵌頓による慢性胆囊炎からの胆囊十二指腸瘻,11か月目に胆囊胆管瘻を伴うMirizzi症候群(TypeⅡ)と診断した.術前に内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)チューブを挿入し,一期的に腹腔鏡下手術を施行した.今回筆者らは,胆囊十二指腸瘻と胆囊胆管瘻を伴う胆石性慢性胆囊炎に対して術前にENBDチューブを挿入することで,術中に超音波による総胆管の位置確認および胆管瘻閉鎖後に胆道造影による胆管の評価をすることができ安全に腹腔鏡下手術で治療することができた.

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欧文目次

日本内視鏡外科学会への入会について

EVENT NEWS

投稿時のチェックリスト

編集後記 猪股 雅史
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 外科医の減少が危惧される中,日本内視鏡外科学会(JSES)の会員数は年々増加している.その数は今では12,000人を超え,学会の運営に携わる評議員も880人に達している.その人気の理由は,やはり本学会が,「内視鏡外科」というテーマのもと,外科医の王道とも言える「手術手技」にこだわり続け,創意工夫と新しいテクノロジーの革新を積み重ね社会に貢献してきたためと考える.一方,新しい手術手技の発展には,必ず,客観的,科学的な評価方法のもとに従来手術と比較した有用性や安全性が示されることが必要である.新しい手術手技の開発,改良,そして標準化を支えるサイエンスの根幹の一つが本学会誌の役割だと感じている.

 本誌は1996年に創刊され,今年でちょうど20年を迎えた.その赤を基調とした表紙には,先人たちの絶え間ない努力と情熱が感じられ,私は秘かに本誌を和製レッド・ジャーナルと呼んでいる.そしてこの度,渡邊昌彦新理事長のもと,この歴史と伝統ある本誌の編集委員を担当することとなり,大変光栄に感じている.本誌への投稿の特徴は,比較的若手外科医が多く,大学のみならず市中病院における手技の工夫やデバイスの開発,それらに関する症例報告などが毎月数多く寄せられている.11名から構成される編集委員会では,毎回,一つ一つの投稿論文を目の前に皆,真剣勝負であり,新知見・論理性・倫理性に基づいて厳格に評価するだけでなく,どのように加筆修正したら掲載に値するかを徹底的に議論している.優れた原著論文に対しては学会英文誌への投稿も推奨している.今では2か月に1回の論文査読がとても楽しみになっており,編集会議は外科医の「創意工夫」,「着想の豊かさ」を知り得る“至福の場”でもある.

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第29回日本内視鏡外科学会総会を下記のとおり開催いたします.

会員の皆様には多数ご参加下さいますようお願い申し上げます.

第29回日本内視鏡外科学会総会

会長  渡邊 昌彦

会 期:2016年12月8日(木)〜10日(土)

会 場:パシフィコ横浜

    〒220-0012 横浜市西区みなとみらい1-1-1

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
21巻4号 (2016年7月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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