日本内視鏡外科学会雑誌 18巻4号 (2013年7月)

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◆要旨:Body mass index〔以下,BMI(kg/m2)〕30以上の肥満患者17例を対象とし,トロッカー留置法,トロッカー留置までの時間,周術期結果などを後方視的に検討し,肥満症例に対する婦人科腹腔鏡手術の是非を検証した.第1トロッカー留置法は,Open法6例,Closed法4例,オプティカル法7例であった.そのうち,オプティカル法は第1および全トロッカー留置までの時間が最も短く,スムースに留置可能であった.術式は腹腔鏡下子宮全摘出術,腹腔鏡下筋腫核出術などの難度の高い術式も完遂しえた.術後合併症は発熱を1例に認めたのみであった.BMI30を超える肥満症例に対する婦人科腹腔鏡手術は容認できるものであり,第1トロッカー留置法はオプティカル法が有用であると考えられた.

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◆要旨:当院で行った下行結腸から直腸までの腹腔鏡下大腸切除543例のうち,persistent descending mesocolon (PDM)と判断したS状結腸固定異常を13例(2.4%)に認めた.PDMは左側結腸間膜が短縮し,S状結腸は小腸間膜や右側骨盤壁と癒着していること,下腸間膜動脈の分枝が放射状に分岐していることなどが特徴的であり,S状結腸が蛇行しさらに下行結腸と癒着するlong-S型と,それがなく直線的に下行結腸から移行するshort-S型に分類可能であった.術中は特に下行結腸の辺縁動脈を損傷しないよう注意を払う必要があった.PDMを伴う症例では通常のS状結腸と比較すると手術時間が長く,出血量は多かったが,術後在院日数に差はなく,腹腔鏡下手術でも安全に施行可能であった.

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◆要旨:患者は35歳,男性.感冒症状にて近医を受診した際に胸部X線で右上縦隔に異常陰影を指摘された.胸部CT,MRIで精査を行うと,右頸部から右中縦隔にかけて内部均一な脂肪濃度を示す腫瘍を認めた.診断と治療目的に手術の方針となった.まず,頸部襟状切開を置き頸部で可及的に腫瘍を剝離した後,胸腔鏡を用いて胸腔内より腫瘍の完全切除を行った.診断は頸縦隔型脂肪腫であった.自験例のように腫瘍が頸胸部2領域にまたがる場合,頸部アプローチと胸腔鏡を併用することにより腫瘍を安全に完全切除することができた.

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◆要旨:患者は70歳,女性.シートベルト着用下での正面衝突事故後,当院にドクターヘリで救急搬送された.来院時,前胸部痛と軽度の呼吸困難を認め,CTにて左外傷性横隔膜破裂と診断し緊急腹腔鏡下手術を施行した.腹腔鏡下観察において他臓器損傷は認めず,左三角間膜やや腹側の腱中心付近で横隔膜腱性部が横方向に5cm裂けており,同部位より胃・大網が左胸腔内に脱出していた.脱出臓器を腹腔内に還納し,横隔膜破裂部を2-0vicrylTMで結節縫合し修復した.術後8日目,合併症なく軽快退院した.

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◆要旨:切除可能大腸癌同時性肝転移に対する手術の時期については,現在議論が分かれている.一方,腹腔鏡下手術はその技術の向上に伴い多くの領域において広く受け入れられつつあるが,大腸癌同時性肝転移に対する完全腹腔鏡下同時切除症例は本邦での報告は少ない.今回,大腸癌同時性肝転移に対して完全腹腔鏡下同時切除術を3例経験した.手術時間/出血量の中央値は406分/35mlで,これまでの報告と比べ手術時間はほぼ同等であり,出血量は少ない傾向であった.離床,経口摂取開始時期の中央値は術後それぞれ1日,2日であり早期回復が得られた.さらに医療費軽減に対しても有用であり,腫瘍学的短期成績も許容できると考えられる.

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◆要旨:患者は62歳,女性.約30年前,食道アカラシアに対するfundic patch operationの既往があり,今回は繰り返す嘔吐を主訴として来院した.CTで胃のほぼ全体が縦隔内に脱出していることが認められ,食道裂孔ヘルニアと診断された.上部消化管内視鏡での整復ができず,手術になった.左開胸下での食道アカラシア術後のため,腹腔鏡下で食道裂孔を縫縮し,胃体部を横隔膜脚に縫合固定する修復術を施行した.術後透視では胃底部の一部は縦隔内に認められたが,造影剤の流れは良好で,逆流もなかった.現在は症状も改善し,経過良好である.

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◆要旨:患者は31歳,男性.左側腹部の違和感を主訴に受診した.腹部CT,MRIで右腹部後腹膜下に巨大な脂肪濃度病変を認めた.明らかな悪性所見を認めず,後腹膜脂肪腫と診断し手術を行った.腫瘍周囲に浸潤傾向を認めず,被膜を損傷することなく完全腹腔鏡下に切除可能であった.病理所見は,成熟した脂肪織から構成され,組織学的にも異型や脂肪芽細胞を認めず,脂肪腫と診断した.後腹膜腫瘍に対する腹腔鏡下手術は,その拡大視効果を利用し,より繊細な手術が可能で,かつ低侵襲であり有用である.悪性所見を認めた場合は開腹移行に躊躇しないことも重要である.今回筆者らは,巨大後腹膜脂肪腫に対して腹腔鏡下に切除しえた1例を経験したので報告する.

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◆要旨:骨盤腔内の手術後に発生する続発性会陰ヘルニアの発生頻度は低く,稀な病態である.今回,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術後に発症した続発性会陰ヘルニアに対しメッシュを用いた腹腔鏡下会陰ヘルニア修復術を行った症例を経験したので報告する.患者は83歳の男性で,直腸癌に対し腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.術後13か月目に会陰部の膨隆,便秘,食欲不振を認め,臨床経過および腹部CT所見から続発性会陰ヘルニアと診断した.コンポジットメッシュを用いた腹腔鏡下会陰ヘルニア修復術を施行し,術後4か月の現在,ヘルニアの再発は認めていない.続発性会陰ヘルニアに対する腹腔鏡下ヘルニア修復術は有効な治療法であると思われた.

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欧文目次

日本内視鏡外科学会への入会について

EVENT NEWS

「日本内視鏡外科学会雑誌」投稿規定

編集後記 坂井 義治
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 今回は,昨年度の技術認定試験(大腸領域)結果と,最近の本誌へ投稿される症例報告論文に対する個人的感想を述べたいと思います.

 図1に技術認定申請者数の推移を,図2に合格率の推移を示しました.胆囊・胆道領域の申請者数が最近はほぼ一定しているのに比し,大腸領域の申請者数の増加が著しいことが分かります.一方合格率を見ると,胆囊・胆道領域ではほぼ一定しているのに比し,大腸領域では申請者数の増加に逆比例するかのように低下しています.学会・研究会,さらにWeb上で公開されている腹腔鏡下S状結腸切除術のビデオを閲覧すると,この手術手順や手技が標準化されたと感じるのに反し,提出される多くのビデオでは,その手術手順があまりに異なることに驚きます.申請者は意図的に標準と異なる手順や手技を示したいのかと憶測してしまいます.模範的な操作手順を模倣して頂きたいと思います.

 本誌へ投稿される症例報告論文の中で多いものが,術前診断が確定していないものの腹腔鏡下手術の結果,稀な病理診断結果あるいは病態が判明した症例です.本誌が内視鏡外科学会誌であることを考慮して頂き,1)その稀な病態の診断あるいは治療の過程で腹腔鏡手術を選択した理由と,その利点は何だったのか,2)独創的な手技が試みられたのか,この2点を十分検討して頂き,本誌が読者に少しでも有益な情報誌となることを期待しています.

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第26回日本内視鏡外科学会総会を下記のとおり開催いたします.会員の皆様には多数ご参加下さいますようお願い申し上げます.

第26回日本内視鏡外科学会総会

会長  山下 裕一

会 期:2013年(平成25年)11月28日(木)~30日(土)

    ※今回より,初日も午前からの開催となります.ランチョンセミナーも3日間開催いたしますので是非ご参加ください.

会 場:福岡国際会議場

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
18巻4号 (2013年7月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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