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I ある支え手から寄せられた相談
筆者が所属するNPO法人に,20代くらいかあるいはもっと若いと思われる方から,オンラインのメッセージで相談があった。パートナーが少し前に自殺未遂をしたが,複数の理由から医療機関の受診を拒んでいるという内容であった。パートナーは相談者を非常に頼りにしており,相談者が距離を置こうとすると自殺するかもしれない危険な状態であることが窺えた。さらに相談者は,自身の家族との意見の相違があり,緊急性が高いにもかかわらず,板挟みにあって非常に困難な立場にあるように見受けられた注1)。
筆者が所属するNPO法人Light Ring.は,さまざまな問題を抱える当事者を直接の対象とはせず,主に周囲で当事者を支えている「支え手」に対してサポートを行っている。先述の相談に対して主に返信を行ったのは筆者であったものの,Light Ring.では支え手から相談を受けたとき,まずはチーム内で支え手にどう返事するべきかを話し合う。とりわけ今回のケースの場合,相談者のパートナーには自殺未遂歴があることから,緊急性が高いとみなされた。このようなときは相談者と相談者が支え手の安全を期すため,精神保健に関する経験がある医師や心理師,精神保健福祉士などの臨床資格をもつチーム内のスーパーバイザーに,積極的に対応のアドバイスを受けることになっている。
スーパーバイザーより助言を受けながら相談者の対応を担うのは,筆者たちピアスタッフである。ピアスタッフは,相談が寄せられるオンラインスペースの運営や,相談への対応を行っている。ピアスタッフは,安全に対応ができるように研修を受けているものの,基本的には医師や心理師といった臨床資格をもつ専門家ではない。一方で,ピアスタッフは,それぞれがさまざまなバックグラウンドをもちながら,「悩みを抱える他者を支えていたことがある」あるいは「自身が辛い状況にいたことがある」という経験を共有している。
したがって,相談者が身近な人を支えようとして困難な状況に陥っている場合,その人がどのような思いで過ごしていて,具体的にどのような問題があるのかということを,一般的・教科書的な知識だけではなく,経験として共感できることが多い。当事者からの夜中の電話で心身が疲弊していくこと,何をしてあげたらよいのかわからない不安や無力感,その人を支えることから離れることが許されないという感覚,自他境界が曖昧になり,その人を支えることや,その人を心配することが自らの生活の中心になってしまうということ,そして共倒れの危険性など,困難は相談者によって多岐にわたる。負担のあるなかで支えようとしている相談者のことをできる限り具体的に想像し,「よく頑張っていますね」とねぎらい,「こういうことが,できるかもしれません」と,そっと選択肢を提示するのである。

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