特集 虐待新論――「なかったことにしない」ための援助論
ネグレクトされてきた親と子――虐待の連鎖
新井 陽子
1
1被害者支援都民センター
pp.19-23
発行日 2026年1月10日
Published Date 2026/1/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp26010019
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I 事件の概要と「社会のネグレクト」
2018年3月,東京都目黒区で当時5歳の少女・結愛ちゃんが,十分な食事を与えられず,義父からの暴力を受けつづけた末に衰弱死した。警視庁は義父を傷害容疑で逮捕し,その後,保護責任者遺棄致死容疑で再逮捕した。さらに6月には,衰弱していた結愛ちゃんを病院へ連れて行かなかったとして,母親も保護責任者遺棄致死罪で逮捕される。生前,結愛ちゃんに課されていた過酷な日課や,「おねがい ゆるして」と綴られた悲痛なメッセージが報じられると,社会には大きな衝撃と怒りが広がった(船戸,2020)。
その後,母親は手記(船戸,2020)のなかでこう語っている。
「何度も何度も出したSOS。でも,『助けて』と素直にそのたった一言が言えなかった。私が悪いのかもしれない」
なぜ母親は「助けて」の言葉を奪われたのか。どうして社会は,この母子を守れなかったのか。
この母子は,社会全体からネグレクトされていたのかもしれない。

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