特集 村瀬嘉代子1935-2025
村瀬嘉代子の統合アプローチと徳
岩壁 茂
1
1立命館大学総合心理学部
pp.89-95
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25080089
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筆者は,村瀬の統合アプローチに対して,ある程度の関心をもってきた。しかし,距離も感じていた。北アメリカで訓練を受け,その流れのなかで心理療法統合について考えてきた自分にとって,日本の土壌のなかで培われてきた村瀬の統合アプローチにはじめて出会ったとき,「統合」という名が付いていながらかなり異質に感じられた。生活臨床と呼ばれるように,心理療法の枠ということを超えた支援は極めて重要であると認識しながらも,同時に違和感を覚えたのも確かである。村瀬の「統合」という名前の意味についてはっきりと理解できないままであった。しかし,年月が過ぎるなかで,どうやら筆者自身も似たような考え方に異なる道から近づいていると感じるようになった。ここでは,欧米で発展してきた心理療法統合という枠から村瀬の統合アプローチを捉え,実践の知恵を意味するAristotleのフロネシスの考えを紹介しながら,自分なりに村瀬の統合アプローチの特徴を描いてみたい。

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